OWS初心者の装備選び
道具は多すぎなくていい、安全重視の5アイテム
オープンウォータースイミング(OWS)を始めるとき、「何を揃えればいいの?」と迷う方はとても多いです。ネットやSNSを見れば、装備の情報はたくさん出てきます。するとつい、「全部必要なのでは?」「高いものを買わないと危ない?」と不安になりますよね。でも、実際に多くの海を泳ぎ、セーフティの現場も経験してきた立場からお伝えすると、最初から完璧な装備を揃える必要はありません。
大切なのは、安全に・無理なく・楽しく続けられること。そのために必要な装備は、実は多くありません。

はじめに | OWS・スイミングは「道具が多ければ良い」わけではない
OWSを始めようとすると、さまざまなアイテムが目に入ります。
「全部揃えないと危ないかも」
「経験者と同じ装備じゃないとダメ?」
そう感じるのは自然なことです。ですが、初心者のうちは装備が多すぎることが負担になるケースも少なくありません。
まず意識してほしいのは、この3つです。
- 安全に泳げること
- 継続できること
- 快適に楽しめること
この3つを満たす装備だけを選べば、OWS初心者に本当に必要なものは5つに絞れます。
6〜7月のOWS大会に向けて準備を始める方にも、まずこの5つがおすすめです。
装備選びの基本 | この3つの軸だけ覚えてください
装備選びに迷ったら、次の3つの視点で考えてみてください。
① 安全
- 自分の存在を周囲に伝えられるか
- 万が一のとき、リスクを減らせるか
② 継続
- 「また泳ぎたい」と思えるか
- 準備や片付けが負担にならないか
③ 快適
- 冷えや不快感を減らせるか
- 視界や動きにストレスがないか
この3つを基準にすると、装備選びは一気にシンプルになります。
1 | ゴーグル(OWS専用・広角タイプ)
プール用のゴーグルのまま海に入ると、「周りが見えにくい」「不安になる」と感じることがあります。OWSでは、周囲が見えること=安全につながります。
海泳ぎのプロのアドバイス――なぜOWS専用が必要?
「プール用でも泳げますが、OWS専用のものを用意するのがベストです。屋外は日差しが強く、水面の反射でコース(ブイ)が見えにくいため。プール用よりレンズが大きく、視界が広いタイプを選ぶと、周囲の状況や目標物を確認しやすくなります。またOWSでは他の泳者との接触することなどもあるため、レンズとフレームが柔らかい素材でできたOWS用がおすすめです」
選び方のポイント
- 視界が広い広角タイプ
- 天気の良い日は濃い色のレンズ(スモーク、ミラーなど)
- 曇りの日はクリアに近いレンズ
- 偏光レンズもおすすめ
- レンズとフレームが柔らかい素材のもの
初心者へのアドバイス
高価なミラータイプは必須ではありません。まずは「見える安心感」を優先しましょう。
2 | キャップ(視認性重視・シリコン製)
キャップは「泳ぎやすさ」よりも、見つけてもらうための装備です。
海泳ぎのプロのアドバイス――なぜ目立つ色?
「ファッションではなく、命を守るためのアイテムです。海の上で泳いでいる人間は驚くほど小さく見えます。救助員や船舶から見つけやすくするため、蛍光オレンジ、イエロー、ピンクなどの派手な色がおすすめです」
選び方
- 蛍光色や明るい色
- 通常のメッシュキャップで構わない
- 水温が低い時は保温性が高いシリコン製やラテックス製
OWS初心者は、目立つこと=安全と覚えておいてください。チームロゴがなくても問題ありません。
3 | スイムブイ(安全&目印)
OWS初心者にとって、スイムブイは安心を形にした装備です。初心者の練習や大会では必須とも言えるアイテムです。
海泳ぎのプロのアドバイス――なぜ必要?
「腰に紐でつなぐ補助浮き具です。万が一足がつったり、疲れたりした時に掴まって休むことができます。また、視認性が抜群に向上します」
- ボートやサーファーから見つけてもらいやすい
- 疲れたときに掴める安心感がある
- 一人で泳ぐときの不安が軽くなる
選び方のポイント
- 明るい色(オレンジ・イエローなど)
- 空気がしっかり入るタイプ
- 中に貴重品や栄養補給食品等を入れられるバッグ付きが便利
- 初心者は収納なしでも十分
「泳げる自信」より、「戻れる安心」を大切にしてください。
※大会での着用は主催者に使用可能か必ず問い合わせてください
4 | ウェットスーツ(保温・浮力サポート)
全員に必須ではありませんが、次のような方は検討してみてください。
こんな人におすすめ
- 冷えやすい
- 長時間泳ぐと疲れやすい
- 海に慣れておらず不安がある
海泳ぎのプロのアドバイス――なぜ必要?
「単なる保温としてではなく、『浮力』を得ることもできます。低体温症を防ぐ、また毒性のある生物から皮膚を守ってくれます」
選び方のポイント
- サーフィン用ではなく、肩周りが動きやすい「スイム専用」を選ぶ
- 厚さは3mm前後が一般的
- 「今日は使う」「今日は使わない」と柔軟でOK
道具に頼ることは弱さではありません。無理に我慢する必要はありません。
※大会によっては着用に制限がある場合もあります
5 | アフターケア(冷え・日焼け・擦れ対策)
初心者が意外と見落としがちなのが、泳いだ後のケアと事前の肌保護です。
なぜ大切?
- 体温が下がったままだと疲労が残りやすい
- 日焼けや乾燥は回復を遅らせる
- 翌日に影響が出ると、続けにくくなる
海泳ぎのプロのアドバイス――ワセリンや擦れ防止について
「意外と忘れがちなのが、肌の保護です。ウェットスーツの首周りや脇の下は、長時間泳ぐと激しく擦れて痛み(股ズレのような状態)が出ます。海水がしみると非常に辛いため、事前にすれる場所に塗っておくなどの対策が必要です。ウェットスーツの生地を傷めにくい、専用の『ウェットズレ防止用』も市販されています」
最低限あると良いもの
- 擦れ防止用クリーム(ワセリンまたはウェットズレ防止専用)
- 体を温めるアイテム(タオル・ポンチョなど)
- 日焼け・肌ケア用品
- 着替え時の防寒対策
「泳いだ後まで含めてOWS」と考えると、長く続けやすくなります。
買いすぎないことが、いちばんの近道
OWS初心者が陥りやすいのが、「不安だから全部買う」ことです。
結果として、
- 使わない装備が増える
- 荷物が多くて準備が大変になる
- だんだん続かなくなる
こうしたケースを、何度も見てきました。
まずは必要最低限の装備で、安全に気持ちよく泳ぐ。慣れてきたら、自分に合うものを少しずつ足していけば十分です。

まとめ | 装備は「自分を助ける道具」
オープンウォータースイミングは、我慢や根性で続けるスポーツではありません。
装備は、
- 不安を減らし
- 楽しさを増やし
- 長く続けるための味方
最初の一歩は、この5つで十分です。
安全を大切にしながら、海でのスイミングを楽しんでください。
※本記事の専門的なアドバイスは、OWSに精通する守谷さんにご協力いただきました。
Masayuki Moriya
オーシャンナビ主宰のOWSアドバイザー/守谷雅之
海でのスイムを楽しむことを目的として、スクールやイベントを通じて多くの人々に海でのスイムを楽しんでもらう活動を行っています。2011年8月22日に津軽海峡の単独横断泳に成功され、日テレの24時間テレビ遠泳企画やイッテQ遠泳部でトレーナーを務めるなど、海でのスイムの楽しさを広めるため、多岐にわたる活動を続けておられます。

速さより、崩れない力。OWSを長く楽しむために
守谷さんからのメッセージ
オープンウォータースイミング(OWS)において、最も必要とされるべきスキルは「速さ」ではありません。それは、いかなる状況下でも呼吸を乱さず、自分のペースを守り続ける「崩れない力」です。
どれほど速く泳げる実力があっても、波や風に翻弄されてパニックに陥ってしまえば、その力は無意味になります。常に心に余裕を持ち、ゆったりとしたリズムで体力を温存できる「崩れない力」こそが、自らを危険から守り、さらには周囲に気を配る余裕を生み出します。
OWSの醍醐味は、自然と戦うことではなく、自然の一部になることにあります。潮の流れや風向きといった人間の力が及ばない環境に対し、謙虚に向き合う姿勢が欠かせません。コンディションを見極めて「今日は泳がない」と決断できることは、決して敗北ではなく、自分を客観視できる知性と自然への深い敬意の証だと思います。
タイムという数字に縛られることなく、無理のない範囲で「ゆったりと長く」泳ぐことで、競技としての疲労を超えた、心が洗われるような感覚を手に入れることができるでしょう。
「一生この海と付き合っていこう」というスタンスこそが、OWSを最高の生涯スポーツに変えてくれます。年齢を重ねる中での体力の変化を否定するのではなく、その時々の自分に合った泳ぎで新しい景色を見に行く。海に身を委ね、自らの力で進む体験は、私たちに根源的な自信と、何歳になっても色褪せない充実感を与えてくれます。
安全を徹底し、自分を律して泳ぐことは、決して楽しみを制限するような窮屈なことではありません。むしろ「自分は安全に泳ぎ切れる」という確信があるからこそ、不安に邪魔されることなく、本当の意味でOWSを楽しむことができると思います。
「今日は水がきれいだった」「魚と一緒に泳げた」という小さな感動を積み重ねながら、一漕ぎずつ、じっくりと海との対話を楽しみましょう。そのように海と過ごす時間が、この先もずっと続く楽しいスイムライフに繋がっていくのだと思います。
